調剤後に投薬する前の監査についての手順について例をまとめました。
監査の手順の例
監査の手順について簡単に例をあげておきます。
- 処方内容・処方箋の監査
- 併用薬の確認
- 患者背景の確認
- 薬歴の確認・投薬スケジュールから残薬の有無確認
- 処方箋と薬袋の照合
- 処方箋と調剤した薬剤の照合
- 調剤した薬剤の確認
- 調剤録・保険点数の確認
- 薬袋詰め、手帳シールの確認、押印等
順番等の違いはあるにしろ、だいたいこんな感じが多いと思う。
1〜4は調剤前に確認しておくよう厚労省からも言われている。
1. はまず処方内容が妥当かどうか。明らかな用法用量違いは受け付けた時点で問い合わせておきたいところ。2錠分3とか用法用量どっちが間違っているかわからないものもある。
処方箋の監査は、記載不備や期限、偽造かどうかとかも。規格の記載がない、用法の記載がないとか。
2. の併用薬は相互作用はもちろん、抗アレルギー薬とか解熱鎮痛剤系、湿布系は重複しているケースも結構ある。
3. 患者背景は禁忌疾患とかは特に注意したい。緑内障、前立腺肥大、気管支喘息、等々。あとは副作用歴。抗生物質系やピリン系はアンケートで書かれなくても、口頭で確認すると実はあるみたいなケースも結構ある。
4. 過去の薬歴と照らし合わせ。前回もういらないと言われたものが処方されていたり、その逆もあったり。スケジュール的に明らかに足りないもの・いらないものとかも把握しておく。
5. 薬袋のミスは結構見落としがち。事務さんが入力するケースが多いかもだが、責任は薬剤師にある。薬袋と薬剤が間違っているも誤調剤と言えるので十分時間をかけたい。
6. 処方箋と調剤した薬剤の照合。監査のメインの一つと言える。これを間違っていたら100%薬剤師の責任。責任を持ってやりましょう。
7. 調剤した薬剤の中身の確認。これも監査のメインでしょう。
PTPの錠剤、カプセル剤は1シートの数に注意。
漢方や粉の分包品は1シートの数に注意しながら確認。
点眼薬は1本あたりのmL数にしながら。
湿布は1包あたりの枚数に注意。
塗り薬の外用剤は、1本あたりのg数に注意。
注射剤はものが正確であるかと規格・デバイスの確認。インスリンの単位数がただしく薬袋に反映されているかも重要。
一包化は錠剤とカプセル剤の印字もみて正しいものが入っているか。錠数が正しいか。日数が正しいか。空のPTPも確認。色分けや印字もしている場合は正確に用法等が正確に反映されているか。
散剤は重さを計るのとゴミなどの不純物がないか。混合なら混合のメモも確認。色でわかるようになれば一人前ですね。色分けや印字もしている場合は正確に用法等と合っているか。
水剤は全量をメモリで確認。匂いや色も参考に。混合なら混合のメモも確認。計量カップもしくはスポイト等も忘れずに。ラベルの貼り忘れ注意。
取り分けた軟膏は容器の容量と重さで確認。匂いや色も参考に。混合なら混合のメモも確認。ラベルもしくは手書きで正確な薬剤名を。
指導せんなどが必要な薬剤はそれらを忘れていないか。
8. 調剤録・保険点数は会計が変わるという意味で重要。薬学的に問題なくても、会計を間違うと患者さんともこじれやすい。事務さん任せにせず責任を持って。
レセコンがある程度やってくれるだろうが、公費適用や手帳の有無、負担割合、同一成分薬剤の入力、自家製加算の可否、一包化加算の可否、などなど、こちらで判断してなればならないことも多い。
9. 薬袋詰め、手帳シールの確認、押印まで終えて監査終了。ここで間違えると元も子もないので最後まで気を抜かずに。
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監査のコツとポイント、ミスの事例について
監査のコツ、ポイントになるところとミスの事例をあげてみました。
完全に精神論ですが、混んでてもいつも通りの流れでやること。急いでやって間違うより、ゆっくりでも正確な方が、後々のこと(電話で説明したり、最悪患者さん宅まで謝りに行くとか)を考えると時間短縮になる。患者さんが急いでいようが機嫌が悪かろうが、必要な監査は必ずいつも通りやる。
各論について。まずは処方監査、普段見慣れない薬剤は必ず用法用量を確認。結構、用法逸脱はあったりする。薬剤が同じでも用法用量を変更してきた場合についても添付文書の用法用量を確認。案外、食後や食前しか適応がないものとかもある。
例)ベタニスを眠剤と合わせて就寝前に変更→ベタニスは必ず食後服用
処方箋期限は特に門前じゃないクリニック・病院のは注意。数日おいてから薬局にきている可能性がある。
例)門前のクリニックと一緒に眼科にかかった時の処方箋を持参→眼科の処方箋が5日前のもので期限切れ。
併用薬のチェックは最低限禁忌は絶対に見落とさないようにしたい。抗ヒスタミン薬とか、どの科でも処方されるものは重複に注意。あとはアセトアミノフェン製剤も配合剤とか座薬とかもあるもで重なっている場合見落としがち。
例)皮膚科でアレロックを服用中。花粉症でタリオンが処方。
患者背景についても、疾患の禁忌は見落とさないように。
例)潰瘍性大腸炎の患者にモビコールが処方
薬袋の入力ミスはありがち。規格や用法、用量が変わっているので前回Doを引っ張っているケースなど
例)アムロジンが朝食後だったのが夕食後に変わったが、薬袋は朝食後のまま。
処方箋と調剤した薬剤の照合については、とにかく薬剤名を正確に覚えておくのが重要。
例)ベポタスチンとベタヒスチンの取り違い。ニザチジンとチザニジンの取り違い。
調剤した薬剤の中身の確認ではいろいろなポイントがある。薬剤の全規格、類似している名称の薬剤、先発ジェネリックの有無、包装単位、容量、
例)リアルダ錠の8錠シートを10錠シートの数で調剤。
キサラタン5mLを1本で調剤(2.5mL)。
セルタッチパップ21枚を6枚入り包装3パックで調剤(18枚)。
タンタス注のところ、ランタスXR注で調剤。
一包化で1回2錠のところが1回1錠で分包。印字の患者名が間違っている。
ムコダインDSのところ、ムコソルバンDSで調剤。
水剤の1回量が6mLのろころ、計量カップに4mLと記載。
軟膏の混合でヒルドイドソフトで混合のところ、ヘパリン類似物質油性クリームジェネリックで混合。
調剤録・保険点数の確認では調剤録の全部を確認している時間はないかもしれないが、会計に関わるところや医療機関名・医師名などは最低限確認しておきたい。
例)2割負担のところを1割負担で入力。プレドニン5mgの半割で自家製を算定。
薬袋詰め、手帳シールの確認、押印も間違うと大問題になることがある。
例)朝食後の薬剤を夕食後の薬袋に入れてしまった。手帳シールの貼付を兄弟間で逆に張ってしまった
一人薬剤師の時の監査のコツ
一人薬剤師でも事務さんが入力する場合か、入力すらも自分であるかで大きく変わる。
事務さんが入力する場合は、入力した薬袋と自分が調剤しものとを比べることで、ある程度ダブルチェックになるため、調剤過誤の確率は減る。
調剤に自信がなければ、事務さんにも処方箋と比べてもらうのはありでしょう。責任は薬剤師になるが、確認作業自体をしてもらうこと自体は問題ないはず。
入力すらも一人でやる場合には、どこかで一旦作業の流れをリセットした上で監査に臨むのが良いでしょう。調剤と監査の間に別の患者さんの入力を挟むとか、一回保険証を返しに患者さんのところへ行くとか、調剤したら監査の前に薬歴を少し書くとか。
何れにしても一度脳内をクリアにしてから監査をする方が良いでしょう。
ちなみに正式には「監査」でなく「鑑査」だそうです
最後に補足。薬剤師が調剤をした上で行う「かんさ」は、一般的には「監査」でなく、「鑑査」だそうです。正直、監査でもそこまで気にならないけど。
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