薬剤師の転職において、企業に転職したいという希望を持っている方も多いのではないでしょうか。
今回はMR以外の職種に関して狙い目のものをあげてみたいと思います。
薬剤師の転職で企業に行きたい場合
薬剤師の転職では、薬剤師のルーチン業務に飽きてしまったり、他の仕事がしたいというケースも多いでしょう。
その際に人気なのが、製薬企業などの一般企業への転職です。
薬局やドラッグストアなどの薬剤師ほど求人は多くありませんが、薬剤師の資格や知識を活かせる職種はいくつか候補があります。
今回はその中でも、比較的薬剤師の経験や知識を活かしやすい企業のPMS(post marketing surveillance:市販後調査)関連部門を紹介したいと思います。
PMS関連部門の主な仕事は
PMS関連業務は主に、GPSP(good post-marketing study practice)関連業務と、GVP(good vigilance practice)関連業務があります。
GPSP業務の詳細
GPSP業務は製造販売後調査と呼ばれる調査を実施し、再審査資料などの申請資料を作成する業務も行います。
製造販売後調査は新薬が承認された後に課される再審査期間(通常は8年前後)において、安全性や有効性(副作用や効果等)などについてデータを集める調査です。
新薬は治験段階では限られた症例に対してのみの使用であるため、製造販売後調査において初めて、様々な背景がある症例に対して使用されます。そのため、治験段階では発見できなかった新薬の特徴をデータとして集めたりすることから、このような仕事は育薬と言われることもあります。
実際の業務内容は、医療機関と契約をし、ケースカードと言われる薬を使用した個々の患者さんのデータを記載した症例報告書(GPSPでは調査票とも言われる)を収集し、それをデータマネジメントした上で、解析をする、そして当局報告資料(安全性定期報告書や再審査資料)を作成する、というものが主な仕事となります。
実際の医療機関に訪問するのはMRさんにお願いすることが多いですが、イレギュラーなことが発生した場合はなどは、自ら現場に行くケースもあります。
多くの業務があり、様々な知識や経験を身につけることができる職種と言えます。
新薬を発売した後は、ほぼ間違いなく製造販売後調査が必要となるため、新薬メーカーでは必須の業務の一つとなります。
GVP業務の詳細
GVP業務は主に安全性情報(薬の副作用などの情報)を収集して当局などに報告したり、添付文書の改訂などを行います。
薬の副作用情報は日々MRさんが収集したり、医療機関から報告があったりします。
また、前述のGPSP部門からの副作用情報の報告があがってきたり、論文などから自社の薬の副作用情報を入手するケースもあります。
それらの情報に基づいて、個々の副作用の重篤度や薬との因果関係を判定し、重篤な副作用などは当局に報告したりする義務があります。また、添付文書に記載されていない副作用は必要に応じて添付文書に記載するなどの措置を取る必要があります。
また、近年は新薬を発売する上で、医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)を作成することが義務付けられるケースが多くなっています。このRMP作成のメイン業務を担う部門がGVP担当部門であり、重要度が従来よりも高くなってきている職種です。
GVP部門は製薬会社の製造販売業の許可要件の一つであり、製薬会社である以上、かならず必要な部門です。
また、医薬品を販売し続ける上で必ず継続しなければならない業務であるため、法律が大きくかわったりしない限りは、製薬会社にこの部門がなくなることはありません。
PMS関連業務は企業内の人気は高くないので未経験でも狙い目
前述したPMS関連部門ですが、実は企業内ではあまり人気が高い部門とは言えません。
新薬の成分を創出する研究職や、治験を進める開発職などが高い人気があり、その他、社内での地位が高い営業部門や、経営方針を決める経営部門などと比べると、比較的地味な立ち位置となるため、新卒や異動者からもそこまで希望者が多くない部門と言えます。
一方で総務部門や経営部門と異なり、薬の専門的な知識もある程度要求される部門でもあります。
そのため、PMS関連部門は経験のない転職者でも、薬剤の知識があれば、比較的入り込む余地があると言える部門です。
また、企業でも人気の高い開発職と比較的近い立ち位置で業務をする部門であります。そのため、PMS部門で転職をした数年後に、開発部門への異動を希望するということも不可能ではない職種です。
PMS部門で必要な能力と知識|薬剤師としてアピールできる内容
PMS部門で実際に必要となる知識ですが、薬の知識と法律の知識(特に薬機法、GPSP、GVPの部分)です。
薬の一般的な知識は薬剤師を経験していればあまり問題ありません。担当になった製品についてさらに勉強する様にすれば問題ないでしょう。法律の知識はこれから身につけることで問題ありません。法律は誰でも読めば理解できる内容です。薬剤師の国家試験をパスする能力がある人であればまず理解力は問題ないはずです。
次にPMS部門で実際に必要となる能力です。必要な能力は継続的に勉強をする能力と、ルールや手順を守る能力、そして最低限のコミュニケーション能力です。
継続的に勉強する能力は、新しい職種に就いた際に、関連する法律や社内の手順書、そして薬の知識などを継続的に学び続ける能力です。PMS部門に限らず、製薬に関連する業務では多くの法律やルールが関わってきます。社内の手順書も分厚いものが用意されているケースも多いでしょう。これらの内容は数日で覚えられるようなものではありません。自社の薬の知識も含め、継続して勉強していく必要があります。また、それほど専門的なものでなくてもある程度データの扱いや統計の基礎知識などは勉強する必要が出てきます。
ただし、薬剤師である人は、必ず薬剤師国家試験に受かっていると思います。それだけの勉強をしているはずなので、勉強する能力はある程度備わっているはずであり、そこまで心配する必要はありません。
続いてルールや手順を守る能力です。これも前述のとおり、企業で仕事をする上では多くの法律やルールが絡んできます。また、仕事は一人でやるものではなく、他の部門も含め多くの人が関わってきます。そのような中で仕事をする上で、ルールや手順を守るのは非常に重要な能力となります。自分一人がルールが逸脱すると、関連する多くの人たちに迷惑がかかります。それが重なると次第に誰も協力してくれなくなり、仕事が進まなくなってしまいます。ある程度自分一人の作業で仕事が完結する薬剤師と異なり、決められたルールや手順を守ることが非常に大事になります。
この点も薬剤師の人たちは、ある程度倫理観の高い人が多く、ルールを守る傾向があるので、大きな心配はいらないかもしれません。
最後にコミュニケーション能力についてです。PMS関連業務でコミュニケーションを取る相手は、社内の同じ部門の人、社内の異なる部門の人、委託会社、医師などの医療機関、PMDAなどの当局など様々ですが、特に重要なのが、社内のMRさんです。PMS部門では情報の収集のメインはMRさんにお願いすることになります。忙しい営業活動の間にPMS関連の情報収集もやってもらう必要があるため、かなり気を使う必要があります。
しかし、この点も薬剤師を経験していると、普段、気難しい患者さんや医師とコミュニケーションを取る経験があるかと思いますが、その経験を活かすことである程度対応できるはずです。
上記の様に、PMS部門で必要な知識や能力をあげてみましたが、薬剤師として働いた経験を活かせるものが多いです。
薬剤師としての経験をアピールする際には、企業の社員さんと異なり自社の製品だけでなく、幅広い薬剤を取り扱った経験があり、薬の相互作用や副作用を実際の症例で経験しているという点はアピールポイントでしょう。
また、調剤報酬などの関連する法律やルールなど改正されるたびにそれらを確認して業務を進める能力を身につけている、という点も多くの法律が関わってくる企業で働く際のアピールポイントと言えるはずです。
そして、気難しい患者さんや医師などともコミュニケーションを継続してとってきたという点も、様々な人たちと関わりながら仕事を進めていく企業においてアピールできる点となるはずです。
こららの内容をアピールすれば、未経験でも薬剤師から企業のPMS部門に転職するチャンスも十分にあるでしょう。
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