かかりつけ薬剤師の要件や実務について勉強したい人に向いている書籍として、株式会社じほうが発行、株式会社ネグジット総研が企画・編集の書籍、今こそ「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を強化しよう、がとても参考になります。
今こそ「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を強化しようの内容
今こそ「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を強化しよう、の書籍の大まかな内容は以下の通り。
第1章 かかりつけ薬剤師・薬局機能提起の背景
1.かかりつけ薬剤師指導料等誕生 2016年度調剤報酬改定の経緯
→かかりつけ薬剤師制度がどういった背景で誕生したかに触れている。医療費の削減への貢献、医師との連携、患者本位の医療を提供することの必要性について書かれている。
2.患者のための薬局ビジョンとその実現のためのアクションプランの検討
→かかりつけ薬剤師・薬局の3つの機能について触れている
・服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理
・24時間対応・在宅対応
・かかりつけ医を始めとした医療機関等の連携強化・医療機関
ICT(Information and Communication Technology)の活用、具体的には電子版お薬手帳等の活用についてにも記載。
健康サポート機能と高度薬学管理機能についても書かれているほか、薬局業界の進捗状況を評価するための指標KPI(Key Performance Indicator:主要業績評価指標)についても触れている。
また、服用薬剤調整支援料の設立された背景についても書かれている。
3.2018年度調剤報酬改定の方向性
→門前からかかりつけや地域への促進、対物から対人業務への変遷などについて書かれている。
第2章 かかりつけ薬剤師・薬局機能の本質とは?
1 かかりつけ薬剤師・薬局機能の要件
→かかりつけ薬剤師の要件が整理されており、形式要件でなく、本質的なところを考えながら算定するよう書かれている。
2 かかりつけ薬剤師の取り組みの推移・・・量は増加傾向にあるも取り組みにバラつき
→かかりつけを実施できない理由のアンケート結果、かかりつけ薬剤師がいてよかったと実感した経験のアンケート結果、外来服薬支援料、服薬情報提供料、重複投薬相互作用等防止加算などの加算の算定料の推移、電話による状況確認等の実施状況のアンケート結果、大手4大チェーンのコメント抜粋などが書かれている。
3 かかりつけ薬剤師・薬局機能の本質を探る
→かかりつけ薬剤師の算定に熱心に取り組めないスタッフの背景、その理由に関する考察、アウトカムの創出に対して、ビネスモデルキャンバスという手法の実践について記載されている。
第3章 かかりつけ薬剤師・薬局機能推進の成功のポイントとは?
1.アウトカムを生み出すための取り組み例
→PIIS(薬剤師中間介入研究)、HORP(保険者連携プログラム)の例が挙げられている。
2.現場での「小さな成功」創出に向けた取り組み例
→各薬局でのかかりつけ取得のための取り組みを紹介している。メディカルファーマシー、ファーマみらい全快堂薬局、ぼうしや薬局、日本調剤、すずらん薬局グループの事例が記載。
3.「小さな成功」をひろげていくために
→かかりつけ薬剤師浸透のための姿勢や、重点対象患者の絞り込みなどについて記載。
第4章 地域に根ざした選ばれる薬局になるために・・・今後に向けて
1.地域に根差すとは・・・マーケティングの視点
→かかりつけ度の把握などについて。
2.健康サポート機能との連携
→患者さんの来局の意識などについて、ドラッグストアも引き合いに出した内容を記載。
3.チーム医療の原点に
→薬局内でのチーム、地域連携でのチームなどについて言及。
❕付録1:薬剤師クイズ 〜新人薬剤師の退職理由〜❕
一年目で辞めてしまった薬剤師にアンケートを実施した結果、退職理由で最も多かったものはどれ?
A. 勤務時間やシフトの不満
B. 業務内容の不満
C. 人間関係の不満
D. 給与面の不満
今こそ「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を強化しようの感想
各章の最終ページに、章の「まとめ」が記載されており、そこを読むとどのようなことが書かれているかがわかる程度にまとまっていて使いやすいです。
全体的な感想として、2400円という書籍代を払っても良い内容だと思う。
参考になるデータも多く掲載されており、もちろん公に公表されているデータも多いが、それを自分で集めるとなると大変なものも多く、それらがまとまって資料として観れるのはありがたい。
また、各社の取り組みの結果などは、もしかしたらWEB上では探せないデータなんじゃないかというものもあり、そうであれば非常に貴重なデータだと思う。
以下は、各章の感想。
第1章はかかりつけ薬剤師、云々というより、薬局業界再編の流れが書かれている印象。
まぁこの背景を理解していないと、それからの話に繋がらないという意味だと思いますが、もう少しコンパクトにまとめてもらってもよかったかなと思いました。
ただ、状況を把握していない人にとっては、十分有益性の高い内容だと思います。逆に業界状況に詳しい人は読み飛ばしてもよいところかも。
第2章はかなり役に立つデータがまとまっており、かかりつけ薬剤師について知りたい人にとっては、この章だけでもこの本を買う価値があると思う。それくらいよくまとまっている。
特にかかりつけを実施できない理由のアンケート結果、かかりつけ薬剤師がいてよかったと実感した経験のアンケート結果と、それらに関する考察については、非常に有益な内容が書かれていると思う。
また、かかりつけ薬剤師制度に取り組めていないスタッフの理由について、大きく3つに集約できるという点についても、それに対する反論的なものがまとまっており、例えば経営者がスタッフ説得する材料にもなるような内容もあり、参考になるものだと思う。かかりつけ薬剤師の同意書を取るという活動への抵抗感、という点も納得。そのあとのビジネスモデルキャンバスの手法は少し、難しいかなという印象。
第3章では、PIIS(薬剤師中間介入研究)、HORP(保険者連携プログラム)の例が書かれているが、ここまで普通の薬局がやるのは、現時点では少し現実的でないと思うが、それでも今後のかかりつけ薬剤師が向かうべき内容として参考になると思う。
各薬局のかかりつけ同意取得の取り組み例については、実際に取り入れることができるのではないかと思う点が多くあり、十分参考になる内容だと思う。かかりつけ薬剤師指導料同意獲得ステップなどは実際の店舗でも使って良いと思う。
あとは日本調剤の実施した残薬削減額の調査やアンケート結果は興味深い。かかりつけのメリットを患者さんにアンケートした結果は概ね社保のものの結果と同じ傾向なので、患者さん側のメリット感が再確認できる。
第4章はおまけ的な内容かと思った。ただ、健康サポート機能との連携について書かれている部分では、健康サポート薬局の登録状況、さらに大手4大チェーンの取り組み状況などのデータは参考になる部分もある。
また、ドラッグストアの方がかかりつけになりやすい、という話題については共感できる部分も多いと思う内容だった。
どのような人に向いている書籍であるか
かかりつけ薬剤師について、総論的に学びたい人、これからかかりつけ薬剤師になろうとしている人には非常に参考になると思う。このような人たちには特に第2章が参考になるはず。
また、薬局の上位職についており、各薬剤師にかかかりつけ薬剤師になってもらいたい立場の人にも十分参考になる。特に現場でのかかりつけ拒否感のようなものがある職場を改善していきたいような場合は、この書籍の内容、特に第3章なんかは参考になると思う。
すでにかかりつけ薬剤師として多くの患者さんの同意を得ている人にとっては、さほど必要ない内容かもしれないが、今後の方向性などを考察したい場合などには役立つかもしれない。
コメント