薬剤服用歴、いわゆる薬歴について、書き方や記載事項の例などをまとめてみました。
薬歴の記載事項
薬剤服用歴の記載事項は厚生労働省保険局医療課長通知によって挙げられています。
以下、保医発0305第1号の別添3(調剤点数表)より抜粋です。
区分 10 薬剤服用歴管理指導料
(3) 薬剤服用歴の記録には、次の事項等を記載し、最終記入日から起算して3年間保存する。
ア 患者の基礎情報(氏名、生年月日、性別、被保険者証の記号番号、住所、必要に応じて緊急連絡先)
イ 処方及び調剤内容(処方した保険医療機関名、処方医氏名、処方日、処方内容、調剤日、処方内容に関する照会の内容等)
ウ 患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向
エ 疾患に関する情報(既往歴、合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む。)
オ 併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及び健康食品を含む。)等の状況及び服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況
カ 服薬状況(残薬の状況を含む。)
キ 患者の服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)及び患者又はその家族等からの相談事項の要点
ク 服薬指導の要点
ケ 手帳活用の有無(手帳を活用しなかった場合はその理由と患者への指導の有無)
コ 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点
サ 指導した保険薬剤師の氏名
平成30年の改定により「コ 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点」が追加となっています。継続的な患者さんの情報管理を今まで以上にしていく必要があるというメッセージといえますね。
薬歴のSOAP形式での記載
まずはSOAPの定義から確認していきましょう。
Subjective data(S):主観的情報の収集(患者が直接訴える情報など)
Objective data(O):客観的情報の収集(医療従事者が観察した患者情報、検査値、疑義照会内容など)
Assessment (A):S・O情報を基に分析判断し、最も適した計画作成のための根拠(エビデンス)・ 考え方の記載
Plan(P):S・O・Aより導き出した計画の記載
医療薬学 Vol.31,No.4(2005)から引用させていただきました。
薬歴の記載事項の例、定型文など
ここからはシチュエーション別にいきたいと思います。実際の処方内容に沿って記載事項の例、定型文などを挙げていきます。
高脂血症の薬が新規で処方の薬歴記載例
リピトール錠5mg 1錠 分1 夕食後 14日分 |
近年はクレストールやリバロの方がでる印象ですが、リピトールも未だに主力の一つですよね。
さて、高脂血症の薬で新規処方の場合は横紋筋融解症の注意喚起が定番の一つでしょうか。
以下、服薬指導の例
薬剤師:今日はどうされましたか。
患者さん:コレステロールが高いみたいですね。
薬剤師:おいくつくらいでしたか。
患者さん:う〜ん、値はわすれちゃったな
薬剤師:かしこまりました。今日はコレステロールを下げる薬が処方されています。1日1回夕食後に1錠を継続して使用してください。
薬剤師:ごく稀にですが、横紋筋融解症という副作用が出ることがあります。頻度は低いですが、筋肉痛や脱力感が続いたり、尿の色がかわったりするようなことがあれば薬を中止してすぐに受診してください。
横紋筋融解症については、結構ナーバスなところで、眠気の副作用とかとは少し毛色が違う気がしますよね。心配性の人などは強い薬だと思ってしまい、服薬拒否などにつながる可能性もあるので、もう少しぼかした言い方(筋肉痛が続くとかだけを言う)でもよいかなと思います。要は患者さんが異常を見逃さないようにするのが大事なので。
以下、薬歴の記載例
S:コレステロール高いみたい。詳しい検査値は忘れちゃった。 O:リピトール新規処方。検査値の詳細不明 A:脂質異常症の初期治療。 P:継続して使用することを指導。横紋筋融解症について、初期症状を説明し注意喚起。 次回、筋肉痛などの症状がないかを確認する。 |
膀胱炎で主訴がない場合の薬歴記載例
クラビット錠500mg 1錠 分1 朝食後 3日分 |
患者さんは若い女性。
まぁ、、、膀胱炎だよな。こうゆう時本当抗菌剤はもっと適応を狭めて欲しいとか思ったりする。品目ごとにこれは膀胱炎、これは肺炎とか。。。
さて、若い女性は膀胱炎なんて自分から言いたくないのが普通でしょう。医師ならともかく、なんで薬剤師にまでそんなこと話さなければいけないのか、と思って仕方ないでしょう。
今日はどうされましたか???と聞いてもまぁ怒る人はそうそういないでしょうが、自分は結構さらっと膀胱炎ですか?軽く聞くことが多いですね。
薬剤師:今日は膀胱炎とかですか?
患者さん:(うなずく)
薬剤師:(まぁはっきりと答えなくないよな。。。)
薬剤師:1日1回朝食後、1回1錠で3日間飲みきってください。
服薬指導終了。。。
まぁ現実はこの程度でしょうね。話逸れますが、クラビットは正確には抗菌剤ですが、患者さんには聞き慣れているであろう抗生物質で通しちゃうことも結構あります。
一応、抗生物質の場合は特に、患者さんの問診で副作用歴、併用薬がないことを聞いている前提です。もし事前の問診で聞いてなければ服薬指導時でも聞くのが良いでしょう。
この場合の薬歴の記載例は以下の通り
S:膀胱炎(+) 抗生物質での副作用は特にありません。 他に使っている薬も特にありません。 O:クラビット(500) 初回使用 A:併用薬なく相互作用の危険性なし、 P:抗菌剤の飲みきりを指導 次回、再発の有無などをチェック |
風邪の処方の記載例
PL配合顆粒 3g ムコダイン錠500mg 3錠 メジコン錠15mg 3錠 分3 毎食後 5日分 |
風邪の処方。正直、一般用医薬品でも買えそうな内容ですが、まぁ先生に見てもらった方が確実ですもんね。
PLはアセトアミノフェンが入っている点が結構くせ者。
たまに患者さんに併用薬聞くと、
患者さん:そういえば整形でもらった薬も今使っているよ。トラムセットっていうやつ。
薬剤師:!!!(ちょっと聞きたくなかった。。。)
そうです。PLは他のアセトアミノフェンとの併用を避けるよう警告があります。たかだか1包アセトアミノフェン150mgですので1日3回でも450mg。。。カロナール500の1錠にも達しません。ちなみにトラムセットは1錠あたり325mg。
とはいえ、警告で出ているくらいなので疑義は形だけでもしておくのが無難でしょう。
以下、疑義照会の例
薬剤師:薬剤師の〇〇と申します。〇〇さんの処方ですが、普段アセトアミノフェン製剤のトラムセットを1日2錠つかっているようで、PL配合顆粒に含まれるアセトアミノフェンと成分が重複します。総投与量として1日1000mgなので大きな問題はないと思いますが、念のためこのままの処方でよろしいか確認させていただきたくてお電話させていただきました。
医師:そんなことは承知の上です。併用で良いのでそのまま出してください。ガチャン(電話を切る音)。
薬剤師:・・・。
まぁいきなり電話を切られることは稀ですが、結構めんどくくさがられることはありますね。気持ちはわかります。ただ、たまに本当に医師が併用薬を把握してなく、カロナールとかを減量(もしくは中止)するようなケースもあると思うので、アセトアミノフェン製剤は注意が必要ですね。
では、服薬指導例。
薬剤師:今日はどうされましたか?
患者さん:風邪をひいてしましました。昨日の夜は咳でなかなか眠れませんでした。
薬剤師:それは大変でしたね。今日は総合かぜ薬と咳止め薬、痰切り薬がでてます。全て1日3回食後に1錠と1包ずつ使用してください。総合かぜ薬は眠気が出ることがあるので運転は控えるようにしてください。
患者さん:わかりました。整形の薬とは一緒に使って良いんですよね?
薬剤師:はい、トラムセットとPL顆粒には一部同じ成分が含まれますが、処方医の先生もそれを承知の上での処方のようです。両方足してもそこまで多くない量ですので一緒に使ってください。
アセトアミノフェン製剤の場合は、肝機能なども確認できればベストでしょう。処方変更がなくてもこの場合は必ず疑義した記録を残しておくべし。
薬歴の記載例は以下の通り
S:風邪をひいてしましました。昨日の夜は咳でなかなか眠れませんでした。 他に整形でもらっているトラムセットを使っているよ。 O:感冒に対する対症療法薬の処方。 併用薬にトラムセットあるため処方医に疑義照会の結果、処方変更なし、併用指示あり。 A:PL配合顆粒を追加によるアセトアミノフェンの投与量は1000mg/日。肝機能異常を示すデータもなく、数日間であればトラムセットの併用も問題ないと考えられる P:1日3回の服用を指導。眠気が出ることがあるので運転等について注意喚起。 次回、症状に対する効果、副作用の有無をチェック |
その他の記載例
その他にもいくつか書こうと思いましたが、今日は力尽きました。機会があれば、糖尿病の薬が継続do処方の薬歴記載例とか、血圧の薬の量が増えた処方の薬歴記載例を書こうと思います。
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