薬剤の一包化と錠剤の半割についての手順や事前に確認しておきたいこと、一包化・半割の可否、その調べ方についてまとめました。
一包化する前に確認しておきたいこと
一包化を実施する前に色々と確認しておきたいことがある。
患者さんに確認することと、自分の方で確認すること、おおよそ以下の感じ。
①薬剤の一包化の可否
②一包化組み合わせ不可の有無
③患者さんの一包化の希望有無
④医師の一包化指示の有無
⑤分包したくない薬剤の有無
⑥分包の方法の希望確認
⑦分包にかかる時間の了承
①と②は次の段落で詳しく確認していこうと思うが、①は単純にシートから出してOKかという点、②はAとBの薬剤を一緒に分包すると変色するとか、含量低下が起きるとかの話。これらは当然確認が必要。
③は処方箋には一包化指示があるけど、実は患者さんは希望していないという可能性もあるため。また、会計が増えると嫌という患者さんもいるので、この辺も含めて確認する必要あり。処方箋に指示があるけど、患者さんが一包化したくないという場合は、念のため、疑義照会が必要だと思う。
④医師の一包化が指示がない場合は、一包化加算は取れないと考えらえるので、処方箋に指示がなくて、患者さんが希望する場合は、疑義照会等で医師の指示をもらう必要がある。
⑤一包化する場合でもこの薬は調整しながら使用しているので別にしてほしい、などの要望があるケースがある。酸化マグネシウム・プルゼニドなどの下剤系や、カロナールやロキソニンなどの痛み止め系、マイスリーやレンドルミンなどの眠剤系などが挙げられる。
⑥分包の方法として、服用時点が同じものをまとめて分包する連続分包と、朝・昼・夕などの一日の順番通りに分包する繰り替えし分包がある。連続分包の方が主流だと思うが、患者さんによっては繰り返し分包を希望するケースもあるので確認が必要。
また、印字の有無や色分けなど、薬局のルールがある場合もそのルールをあらかじめ説明して了承を得ておく。
⑦分包にこれくらい時間がかかると言っておくと、遅いと言われる可能性は下がると思う。とっさに言うと分包だけの時間を考えてしまうことがあるが、患者さん側から考えると、ピックして分包して、監査まで終わるまでの時間を考えて回答する必要があるだろう。
❕付録1:薬剤師クイズ 〜新人薬剤師の退職理由〜❕
一年目で辞めてしまった薬剤師にアンケートを実施した結果、退職理由で最も多かったものはどれ?
A. 勤務時間やシフトの不満
B. 業務内容の不満
C. 人間関係の不満
D. 給与面の不満
一包化の可否とその調べ方
一包化の可否について、全ての薬剤を網羅して記載するのは無理なので、一般的に分包ができないケースと、一包化の可否の調べ方について確認していきたいと思う。
①一包化の可否について
基本的に一包化ができないものって、光に不安定であるものと吸湿性が高いものがあると思う。
一包化の可否の調べ方の手順として自分が実施しているのは以下の通り。
- 一包化の可否をまとめているサイトを見る
- 添付文書を調べる
- インタビューフォームを調べる
- メーカーに聞く
1. の一包化の可否をまとめているサイトは検索は早いんだけど、不正確の可能性がある。また、正確だったけど、情報が更新されている可能性もある。なので、1.は信用しすぎない方が良い。
2. の添付文書確認は確実性が高いけど、全ての薬剤を一つ一つ確認するのは時間がかかるので、ある程度怪しいと思ったものや過去に一包化した経験がない薬剤を調べるようにしている。具体的には電子で添付文書を見て、「包装」とか、「包装」とかのキーワードで添付文書内を検索する。クラリチンレディタブなんかの例だと「レディタブ錠は自動分包機には適さない」と添付文書に記載がある。
ちなみに、全く別の方法ですが、添付文書の包装単位に、バラ錠包装がある場合は、まず一包化して大丈夫だと思う。なんせバラで売ってるくらいですから、一包化しても大丈夫でしょう。
3. のインタビューフォーム確認は、一包化の可否が怪しいけど、添付文書にはっきり記載がない場合や、分包しない方が良いという論調だけど、何が理由で分包できないのか理由を詳しく調べたい場合にインタビューフォームを確認するようにしている。添付文書確認よりもさらに時間がかかるため、あまり余裕がない場合は後回しにしている。
4. のメーカーの相談室に聞くのは一番確実で漏れがない。しかし、一包化が微妙な薬剤に関しては、「一包化しても大丈夫」とはまず言ってくれない。大抵、こうゆうデータがあります。(あとはそっちで判断してくださいね。)という回答がする。
自分は結構「一包化の推奨はしてないけど、絶対にしない方が良いというデータはないということでよろしいですか?」という聞き方をして、絶対だめなのか、できればやめた方が良い程度なのかを確認するようにしています。
ちなみにPTPシートがおおげなさものは大抵一包化でないかものが多い。ベルソムラとか、クラリチンレディタブとか、アボルブとか。全くあてにならない判断根拠ですが。
②一包化ができない組み合わせについて
代表的なものはオルメサルタン(オルメテック等)とメトホルミン(メトグルコ等)もしくはカモスタット(フオイパン等)があると思う。
理由はメトホルミン、カモスタットが変色することがあるため。
品質への影響ははっきり明言されている情報ソースはあまりないが、メーカーさんから言わせると否定できない、と回答された気がする。
そうなると、薬剤師としては色が変わるだけなので大丈夫とは言い切れない、言い切ってはマズい気がする。
ただ、自分の経験上、実際に合わせて分包しているケースもある。患者さんの要望と医師の指示がある場合は、絶対に断らなければならないレベルではないかとも思う。当然、事前に説明しておくことは必要だが。
それ以外の一包化ができない組み合わせはぱったとは思いつかない。思い出したらまた更新します。
ちなみにオルメテック、メトグルト、カモスタット、いずれの添付文書にも取扱い上の注意として、一緒に分包しない様、ちゃんと注意喚起されています。
オルメサルタン製剤はオルメテック、オルメサルタン以外にもレザルタスがある。メトホルミン製剤は、メトグルコ、グリコラン、メトホルミンの他に配合剤が多くあり、イニシンク、エクメット、メタクト、メトアナがある。今後も増える可能性大なので、同様の注意が必要な点に注意。
レザルタスとエクメットとかで一包化処方きたら、とっさにダメと思わないかも。
錠剤を半割する前に確認しておきたいこと
続いて錠剤の半割について。
処方箋で0.5錠の処方、結構あると思います。
ただし、素直にはい、割ります、というのは結構危険。医師側で半割の可否を考えないで、ただ単に量を半分にするためだけの処方であることもよくある。調べてこれ半割しちゃマズいんじゃ、というケースも結構ある。
半割の処方がきたときに、患者さんに確認することと、自分の方で確認すること、おおよそ以下の感じ。
①錠剤の半割の可否
②半量の規格の有無
③患者さんの半割の希望有無
④1.5錠などの場合は分包の方法
⑤半割にかかる時間の了承
①の半割の可否については後述で詳しく。
②の半量規格の有無については、病院の採用薬の関係で仕方なく0.5錠の処方をきっているケースも多くある。ジェネリックに変えて良い場合は、疑義照会なしで半量の規格にし、1錠で調剤できるため、そもそも半割する必要がなくなることがある。アムロジン5mg 0.5錠→アムロジピン2.5mg 1錠みたいなパターン。先発品で規格を変える場合は当然疑義が必要となるため、疑義が繋がらなくて、患者さんが急いでいる、とかの場合は半量規格があっても泣く泣く半割する、なんてケースも。
③の患者さんの希望有無については、勝手に割って欲しくないなどのケースや、自家製剤加算が増えるのを望まないケース。例としてザイザルとか来シーズンも使いたいから、半錠指示でもPTPのまま欲しいとか、口に含むものなので半割で薬剤師に触ってほしくないとか。自家製剤加算が増えることを知っている患者さんは少ないと思うが、こちら側で割って準備して良いか聞くと、たまに費用かかるの?と聞かれることはある。その場合は正直に言うしかない。
④1.5錠とかの指示の場合で、さらに薬局側で半割する希望が患者さん側からある場合、0.5錠だけを分包するか、1.5錠ごとに分包するか場合によっては確認する必要がある。
これに関しては、薬局側としては1.5錠や2.5錠ごとに分包するのは時間が+αでかかるだけで、正直メリットはない(追加で取れる加算はない)ため、希望を聞かずに0.5錠だけ分包するのもアリだと思うが、余裕があるなら要望を聞いてあげても良いと思う。特に高齢者で薬の管理に何がありそうな患者さんでは、PTPの1錠と半割した0.5錠を飲むというのはコンプライアンスを下げる要因になりうるため。
⑤錠剤の半割も当然ピッキングだけよりは時間がかかる。投薬の順番が他の患者さんと前後する可能性もあるため、あらかじめ時間がかかることを説明するなり匂わせておくなり(こちらで半分に割ってからお出ししますね、と伝えておくとか)するのがベター。
錠剤の半割の可否とその調べ方
正直、結構調べるのがめんどくさい。
半割の可否の調べ方の手順として自分が実施しているのは以下の通り。
- webサイトで半割の可否を調べる
- 添付文書で割線の有無を調べる
- 添付文書で剤形(素錠、その他)を調べる
- 書籍で粉砕の可否を調べる
- インタビューフォームのデータから調べる
- メーカーに聞く
1. のwebサイトで調べるのは、半割に関してはあまり得策でないかも。というのも掲載しているサイトが多くない。半割の可否とうい点ではあまりない。粉砕が可能であれば、半割も可能と考えられるが、粉砕の可否一覧を掲載しているサイトもあまり多くない。
2. の割線の有無については、割線があれば半割を想定していると思われるので半割可能と判断している。
3. の剤形については、割線がない場合でも素錠であれば半割しても製剤的な問題はあまりないと考えられるため、半割可能と考えている。フィルムコーティング錠や特殊製剤の場合は、さらなる確認が必要となる。
4. 書籍で調べる場合、じほうの「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック 第7版」を見るのが一番安心感がある。粉砕可能なら、半割も大丈夫でしょうという理屈。割線の有無も記載されているので便利。値段が高いのがネックなのと、可否を判断しきれない薬も結構あるのが現実。
5. インタビューフォームについては、正直、あまり判断できない。半割のデータが掲載されているものはまずないだろうし、粉砕の可否についてもデータはあっても結論は書いてないケースがほとんどでしょう。正直、自分はあまりインタビューフォームから判断するのはお勧めできない。ここまでやるならメーカーにも聞くのが無難。
6. メーカーに聞くのがやはり最終手段。1〜5の手順を踏んだ上であれば、絶対OKというケースはすでに除外されているので、結局玉虫色の回答をもらうことが多い。
実際に聞いた経験があるのは、フィルムコーティング錠で割線がない場合などで、フィルムコーティング錠である理由を聞いて、半割するとどうゆう影響が考えられるかを聞く感じ。こうゆうケースでメーカー側ははっきり大丈夫ということはまずないと思いますが、話し方のニュアンスから、絶対しないほうが良いか、立場上良いとは言えないけど別に良いんじゃないの?と思っているかとか、何となくはわかる。一応「半割して問題があった事例とかありますか?」とか聞くと、絶対だめかどうかはわかるかも。
コメント