薬歴で悩みがちな「A」アセスメントについて、書き方や実際の例などを確認していきます。
薬歴の「A」アセスメントとは?
薬歴でよく用いられる形式のSOAPのうち、「A」は「Assessment」であり、直訳すると「評価」となります。
もうちょっと掘り下げると、SOAPの「S」や「O」から考えられることや、薬剤師の行動である「P」の根拠となる考えが「A」となる、というのが一般的ですかね。
ただ、これを読んでいる皆さんも経験あるかもですが、結構この「A」に関して悩むこと多いですよね。
書きにくいというか、書くことが無いというか。
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A. 勤務時間やシフトの不満
B. 業務内容の不満
C. 人間関係の不満
D. 給与面の不満
薬歴の「A」アセスメントの書き方のコツ
薬歴の「A」を書き方の個人的に思うコツは、以下の2点です。
②自分の中で定型文を5〜6個決めておく
①に関しては、「A」(薬剤師の考え)によって「P」(薬剤師の行動)が生まれるはずなので、それを逆算すればおのずと書くことが決まるということですね。
仮に「P」で「各薬剤の継続を指導、副作用の初期症状について再度注意喚起した。」などとした場合は、「A」は「薬の服用については慣れてきた様子、継続の重要性やリスクを再度認識してもらう良いタイミング」など入れたりしてます。
②に関しては、予め自分の中の定型文を作っておくことです。
もちろんどの患者さんに対しても毎回同じ定型文を使うのはダメですが、定型文を持っておいてそれを個々の患者さんごとに、個々のケースに合わせて改変しながら使うことで、薬歴の時間短縮にもなるため、定型文を持っておくのは悪いことでは無いでしょう。
私の場合は、「コンプライアンスの良/不良」、「副作用の初期症状の有/無」、「使用薬剤の効果の有/無」「血圧など数値・症状の安定度」、「臨時薬・初回使用の薬剤に関して注意喚起するポイント」などを定型文として整理しており、個々の患者さんのケースごとに改変して使うことが多いです。
・「コンプライアンスの良/不良」→飲み忘れなく、コンプライアンスは良好
・「副作用の初期症状の有/無」→○○(薬剤名)の嘔気などは無い様子
・「使用薬剤の効果の有/無」→前回より開始の○○(薬剤名)の効果を実感している様子
・「血圧など数値・症状の安定度」→血圧は安定傾向あり
・「臨時薬・初回使用の薬剤に関して注意喚起するポイント」→○○(薬剤名)は食前使用のため用法の注意喚起が特に必要
などといった感じです。
副作用など断定できない場合
患者さんに副作用のような症状が出た場合でも、薬剤師として断定できないケースもありますよね。
というか、断定できないケースの方が多い気がします。
自分の場合はそのような時は、「○○(症状名)は○○(薬剤名)の副作用の可能性」や、「○○(症状名)は○○(薬剤名)が原因?」といった感じで断定しないような書き方としています。
また、因果関係が低そうなケースでは、「因果関係は不明だが○○の症状あり、○○(薬剤名)の可能性は低い?」などといった書き方もします。
1回飲み忘れたらコンプライアンス不良?
コンプライアンスの良/不良を「A」に書くケースも多いかと思いますが、1回だけの飲み忘れの時などは、「良/不良」の判断について迷いますよね。
私の場合は「1回飲み忘れがあるが概ねコンプライアンス良好」などといっった書き方が多いです。
もちろん、薬剤の種類によっては1回の飲み忘れ影響が大きいこともあるので、その場合は「不良」と判断して、「P」につなげることもあります。
Do処方で書くことが無い場合
Do処方の場合、問題が無いと考えればそれを書けば良いと思っています。
「○○(症状名)のコントール良好」や「血圧の値は問題無し」なども立派な薬剤師の考えなので「A」に書くことに値すると思います。
薬歴の「A」アセスメントの例
実際にいくつか「A」の記載例を挙げていきたいと思います。
抗凝固薬のdo処方rp.1) プラザキサカプセル110mg 2cap
分2 朝夕食後 28日分
O) プラザキサ do処方 28日分
A) コンプライアンス良好。プラザキサによる出血傾向も無し。ワーファリンと納豆との相互作用について知識を得ている様子。
P) プラザキサ継続を指導、副作用の初期症状について再度注意喚起した。納豆との相互作用が問題になるのはワーファリンであることを説明し、プラザキサでは問題無いことを説明した。
プラザキサの継続処方のパターンです。ハイリスク加算をとっている場合は当然副作用やコンプライアンスの確認は必須ですね。納豆との相互作用を他の抗凝固薬や抗血小板薬でも気にされる患者さんも多いので例として挙げてみました。
膀胱炎での初回受診
rp.1) クラビット錠500mg 1T
分1 夕食後 5日分
O) 膀胱炎にて抗菌剤の処方、ロキソニンの併用についてクリニックにて注意喚起済み
A) 過去に抗生物質での副作用歴はないが、クラビットは初回使用なので念のため過敏症については注意喚起が必要。ロキソニンの併用注意については理解良好の様子。
P) 1日1回の用法を確認し、飲み忘れなく5日分飲みきるよう指導。可能性は低いが過敏症の症状等について注意喚起。ロキソニンの併用注意の理由について再度説明。
膀胱炎でクラビットが処方されたパターンを挙げてみました。キノロンとロキソニンは医師によっては気にしない先生もいると思いますが、クリニック側でも注意喚起をしているような場合は、注意が必要な理由などを補足したりしています。あと、抗生物質・抗菌剤系は過敏症の頻度が低く無いので、あえて過去の副作用歴などを詳しく書いたりしています。
睡眠導入剤のdo処方
rp.1) マイスリー錠5mg 1T
分1 就寝前 28日分
O) マイスリー5mg do処方
A) コンプライアンス良好。受診間隔も問題なく用法用量を守れている様子。残眠感などの副作用も見られず。
P) 引き続き用法用量を守るよう指導、服用後の活動は健忘の恐れがあるため再度注意喚起。
do処方で特に書くことに困りそうな例を考えてみました。まぁマイスリーのdo処方でも最低限これくらいは書くことあるかなぁと思います。薬局によっては薬歴は質よりも速さを求められるケースもあるため、やはりある程度は自分の中の定型を持っておくのは良いですね。
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