スローケーの販売中止がメーカーから報告されました。おそらく採算が取れないためなのでしょうが、近年のケナログといい、外資は本当に思い切ってきますね。今回はスローケーの代替品と、変更するときの注意点をみていきたいと思います。
スローケーの代替品の候補
注射とか原末とかを除くと、主な代替品は以下の通り。
一般名・成分名 | 製品名 | mEq |
塩化カリウム | ケーサプライ錠600mg | 8mEq/錠 |
L-アスパラギン酸カリウム | アスパラカリウム錠300mg アスケート錠300mg |
1.8mEq/錠 |
グルコン酸カリウム | グルコンサンK錠5mEq、2.5mEq | 5mEq/錠、2.5mEq/錠 |
ケーサプライはスローケーのジェネリックなので何も考えずに変更しても問題なさそう。
アスパラカリウム錠とグルコンサンK錠に変えるときは少し注意が必要となる。
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mEq数だけで用量は決められない
カリウム製剤を変更する際には製剤のmg数じゃなくて、mEq数で変更するのが大事!
というのは、薬剤師なら誰でも気づくと思いますが、単純に同mEq数にすれば良いと考えるは不正解となります。
まず、スローケートと前述した製剤の用法の確認。
一般名(製品名) | 1錠あたりのカリウムmEq | 用法 |
塩化カリウム (スローケー錠600mg) (ケーサプライ錠600mg) |
8mEq | 通常成人には1回2錠を1日2回食後経口投与する。 →32mEq |
L-アスパラギン酸カリウム (アスパラカリウム錠300mg) (アスケート錠300mg) |
1.8mEq | 通常成人1日0.9〜2.7g(錠:3〜9錠、散:1.8〜5.4g)を3回 →5.4〜16.2mEq |
グルコン酸カリウム (グルコンサンK錠5mEq、2.5mEq) |
5mEq、2.5mEq | 1回カリウム10mEq相当量を1日3〜4回経口投与 →30〜40mEq |
上記の通り、スローケーとアスパラカリウム錠は用法からすると1日のmEq数に結構開きがある。
これ、結構定番のヒヤリハットのようで、スローケーからアスパラカリウムに変更する際に単純にmEq数だけ見ながらやると、アスパラカリウムでは過量投与になる恐れがあるとのこと。
この理由は、両者の組織移行性に違いがあるためであり、アスパラカリウム錠はスローケーよりも移行性が高いため、すくないmEq数でも効果が高いと考えられる。
この事例についての詳細は以下の資料がわかりやすい。P.79参照。
アスパラカリウム錠などのL-アスパラギン酸カリウム製剤は、スローケーなどの塩化カリウム製剤の1/4〜1/2量以下で治療効果が発揮されるとのこと。グルコン酸カリウム製剤は、3種類の中でももっとも組織移行性は高いということだが、カリウムのmEq量はなぜか塩化カリウム製剤と同程度とか。この理由はよくわからなかった。
まとめると、スローケーからケーサプライに変えるときは、ただのジェネリック変更なのであまり問題ない。
スローケーからグルコンサンK錠に変えるときは、多少効果が変わるかもしれないが、同mEq数になればさほど問題ない。スローケー1錠(8mEq)に対してグルコンサンK錠5mEqを1.5錠(7.5mEq)くらい。
スローケーからアスパラカリウム錠やアスケート錠に変えるとときは特に注意が必要。スローケー1錠(8mEq)に対してアスパラカリウム錠1〜2錠(1.8〜3.6mEq)くらいが妥当か。アスパラカリウム散でも同様の注意が必要。
用量に注意が必要なことだけでも覚えておく
さて、前述のように、スローケーから他の製剤への代替について(その他のパターンも含めて)、単純なmEq数だけでは決めれらないことを確認していきましたが、詳細な内容まで覚えておくのはなかなか難しいでしょう。
したがって、最低限、カリウム製剤の成分変更をした際には、用量設定には十分注意が必要、ということだけを覚えておいて、実際の量を計算するのは、確実な資料を見比べて、というのが現実的でしょう。
無難なのは、スローケーからの変更はジェネリックのケーサプライへの変更。ただし、少し納入しにくい状況も続いているようですね。
グルコンサンKやアスパラカリウムへの変更処方である場合は十分注意するようにしましょう。
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