薬剤師としてのサプリメントの患者さんへの説明、注意点などを確認していきます。
今回は水溶性ビタミンについてです。
水溶性ビタミンの一覧と特徴
水溶性ビタミンについても、公益財団法人長寿科学振興財団が運営している健康長寿ネットがわかりやすうまとまっています。(健康長寿ネット)。
水溶性ビタミンの一覧と、特徴は以下の通り。
水溶性ビタミン | ビタミンB1 | ビタミンB2 | ビタミンB6/12 | ビタミンC |
別名 | チアミン | リボフラビン | ピリドキサール、ピリドキシン、ピリドキサミン/コバラミン | アスコルビン酸 |
1日必要量(成人) | 0.8〜1.3mg | 0.9〜1.4mg | 1.0〜1.2mg/ 2.0〜2.1㎍ |
85mg |
1日上限 | – | – | 40〜60mg/- | – |
主な機能 | エネルギー産生に関与 | 発育促進、皮膚、髪、爪などの細胞の再生 | 免疫機能維持、皮膚抵抗力、ヘモグロビン合成、神経伝達物質合成、脂質代謝/たんぱく質・核酸生合成、アミノ酸・脂肪酸代謝、赤血球成熟 | コラーゲンの生成、毛細血管・歯・軟骨の維持、メラニン色素の生成抑制 |
不足した場合 | 食欲不振、疲労、だるさ、脚気 | 口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、角膜炎、成長障害 | 皮膚炎、舌炎、口内炎、口角症、貧血、リンパ球減少症/巨赤芽球性貧血、脊髄や脳の白質障害、末梢神経障害、しびれや知覚異常 | 血管がもろくなる、壊血病、皮下出血、骨形成不全、貧血 |
過剰摂取 | – | – | 感覚神経障害 | 活性酸素の産生、細胞死? |
含まれる食品 | 豚肉、魚の血合部分、ぬか、胚芽 | 落花生などの豆類、酵母、レバー、牛乳、卵、緑黄色野菜 | 野菜、魚介類、肉類/介類(サンマ、イワシなど)、肉類(特にレバー部分)、貝類(カキ、アサリなど)、卵、チーズ | 果実類、野菜、いも類、緑茶 |
注意する併用薬 | – | – | – | |
主な医薬品 | アリナミンF | フラビタン、ハイボン | ピドキサール/メチコバール | ハイシー、シナール |
水溶性ビタミン | ナイアシン | パントテン酸 | 葉酸 | ビオチン |
別名 | ニコチン酸、ニコチンアミド、ビタミンB3 | ビタミンB5 | ビタミンB9、ビタミンM、プテロイルグルタミン酸 | ビタミンB7、ビタミンH |
1日必要量(成人) | 10〜16mgNE | 4〜7mg | 200-210㎍ | 50㎍ |
1日上限 | 250〜350mgNE | – | 900-1000㎍ | – |
主な機能 | 糖質、脂質、タンパク質の代謝、エネルギー産生に関与 | 多くの酵素反応に関与、コレステロール低下、HDLコレステロール増加、血小板数改善、腸管蠕動促進 | 赤血球の生産、核酸やたんぱく質の生合成、胎児の神経管閉鎖障害のリスク減 | 皮膚や粘膜の維持、爪や髪の維持 |
不足した場合 | ペラグラ、皮膚症状、口舌炎や下痢などの消化管症状、神経障害 | 易疲労性、食欲不振、便秘、めまい、頭痛、動悸、不眠など | 巨赤芽球性貧血、動脈硬化、胎児の神経管閉鎖障害 | 乳酸アシドーシス、免疫不全症・糖尿病リスク、皮膚炎、 萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐き気、憂鬱感、顔面蒼白、性感異常、前胸部の痛み |
過剰摂取 | 消化不良、重篤な下痢、便秘、肝機能低下、劇症肝炎 | – | ビタミンB12欠乏による大赤血球性貧血の発生を隠す | – |
含まれる食品 | 肉類、魚介類の他、豆類、緑黄色野菜 | 肉類、魚介類、牛乳、豆類 | 緑黄色野菜、肉類、卵黄、牛乳、豆類 | レバー、卵黄、魚介類、キノコ類、ナッツ類 |
注意する併用薬 | – | – | – | – |
主な医薬品 | ニコチン酸アミド、ユベラN | パントシン | フォリアミン | ビオチン |
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水溶性ビタミンの注意点と薬剤師として伝えるべきこと
水溶性ビタミンについて、サプリメントなどで相談を受けた際、販売する際に伝えておくべきことをそれぞれ確認していきます。
ビタミンB1
ビタミンB1の別名はチアミン。
解糖系でピルビン酸からアセチルCoAに変わる際に必要なビタミン。
不足した場合は、食欲不振、疲労、だるさなどが考えられ、脚気も有名。極端な不足だと脳や神経に障害、脚気(足の浮腫、しびれ、動悸・息切れ)の他にもウェルニッケ・コルサコフ症候群(中枢神経が侵される障害)の可能性。
水溶性なので過剰摂取の心配はまずないが、1日10gのチアミン塩酸塩を2週間半摂取し続けると、頭痛、いらだち、不眠、速脈、脆弱化、接触皮膚炎、かゆみなどの症状が現れたという報告もあるよう。
薬との飲み合わせは、アリナミンFやその他にもチアミンを含むものは避ける、というか無駄になる?
ビタミンB2
ビタミンB2の別名はリボフラビン。
「発育のビタミン」ともいわれ、発育促進に重要な役割、皮膚、髪、爪などの細胞の再生にも関与する。
不足すると口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、角膜炎などの可能性。
水溶性であり、過剰摂取の心配はまずない。
薬との飲み合わせは、フラビタンやハイボンはビタミンB2製剤なので、これらを使っている場合はビタミンB2のサプリはあまり必要ない。
ビタミンB6/ビタミンB12
ビタミンB6活性をもつ化合物はピリドキサール、ピリドキシン、ピリドキサミン。
免疫機能維持、皮膚抵抗力、ヘモグロビン合成、神経伝達物質合成、脂質代謝などの作用。
不足すると皮膚炎、舌炎、口内炎、口角症、貧血、リンパ球減少症などのリスク。成人の場合は、うつ状態、錯乱、脳波異常、痙攣発作など神経系のリスクも。
水溶性だが、過剰摂取による健康被害(感覚ニューロパシー)の報告がある。
薬との飲み合わせとして、レボドパの減弱の可能性あり。ピドキサールで併用注意となっている。
ビタミンB12はアデノシルコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキシコバラミン、シアノコバラミンがある。
たんぱく質や核酸の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝、赤血球の成熟に関与。
不足すると巨赤芽球性貧血、脊髄や脳の白質障害、末梢神経障害、しびれや知覚異常のリスクなど。
水溶性であり、過剰摂取の心配はない。
薬ではメチコバールと作用が重なる。
ビタミンC
ビタミンCは別名アスコルビン酸。
コラーゲンの生成、メラニン色素の抑制、抗酸化作用などがある。毛細血管・歯・軟骨などを正常に保つ作用も。
不足すると、血管がもろくなる壊血病。さらに皮下出血、骨形成不全、貧血などのリスク。
水溶性であり、過剰摂取の心配はほとんどないとされるが、過剰摂取により虚血状態により組織や細胞中の酸素濃度が低下した場合には、活性酸素を産生し、細胞死を引き起こす可能性が報告されている。
薬ではハイシーがビタミンCの成分。パントテン酸を含む配合剤のシナールも有名。
ナイアシン
別名はニコチン酸とニコチンアミド。ビタミンB3とも言われる。
糖質、脂質、タンパク質の代謝、エネルギー産生に関与。
不足すると、ペラグラになる。ペラグラの主な症状は、赤い発疹の皮膚症状、口舌炎や下痢などの消化器症状、神経障害など。
過剰摂取で消化不良、重篤な下痢、便秘、肝機能低下、劇症肝炎などの報告があるため、水溶性だが、過剰摂取は避けるようにする。
処方薬ではニコチン酸アミド散10%「ゾンネ」がある。ビタミンEにナイアシンを加えたユベラNの方が有名。
パントテン酸
別名はビタミンB5。
多くの酵素反応に関与。コレステロール低下作用、HDLコレステロール(善玉コレステロール)増加作用、血小板数改善作用、腸管蠕動促進作用などが考えられる。
不足すると、欠乏の初期症状としては疲れやすくなったり、食欲がなくなったり、便秘の可能性。めまい、頭痛、動悸、不眠などが起こり、進行すると知覚の異常、激痛、麻痺、副腎皮質や消化管などの臓器の機能不全、成長停止のリスク。
水溶性なので過剰摂取のリスクはほぼなし。
処方薬ではパントシン錠などがある。
葉酸
葉酸の別名はプテロイルモノグルタミンであり、ビタミンB9、ビタミンMとも呼ばれる。
赤血球の生産、核酸やたんぱく質の生合成に関与し、特に胎児にとっては重要な栄養成分であり、神経管閉鎖障害のリスクを減らす。
不足すると、巨赤芽球性貧血、動脈硬化の引き金、胎児の神経管閉鎖障害のリスク。
水溶性だが、ビタミンB12が欠乏している場合は、大赤血球性貧血の発生を隠すリスクがある。
処方薬ではフォリアミン。メトトレキサートを使用している場合に処方されるケースが多い。
ビオチン
別名はビタミンH、ビタミンB7。
皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康に関与。
不足すると、乳酸アシドーシスのリスクや、リウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などの免疫不全症のほか、インスリンの分泌能が低下し1型および2型の糖尿病のリスクが高まる。皮膚炎、 萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐き気、憂鬱感、顔面蒼白、性感異常、前胸部の痛みのリスクも。
水溶性で過剰摂取のリスクは少ない。
処方薬では、ビオチン散0.2%「フソー」など。
水溶性ビタミンのサプリメント
水溶性サプリメントは色々な形で販売されている。
個別のビタミンや複合ビタミンサプリ、さらにはミネラルとセットで販売されているケースも多い。
水溶性なので、過剰摂取のリスクは高くないが、近年は水溶性ビタミンの過剰摂取についてもいくつか報告があるため、むやみな使用や、医薬品との併用は避ける方が無難。
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